2018.4.11 中国6日目 ー北京ー

4月11日、滞在6日目。夜行列車で北京へ向かう。南京発上海行きよりも乗客は大人しい。長時間夜行ということもあり、みな淡々と思い思いの時間を過ごしている。食堂車へ行ってみると、35元(約600円)でボリュームあるプレートが。持ち込んだビールや紹興酒を呑みながらダラダラ過ごす。当然硬座などより食堂車の方が居心地よく、他の乗客たちもここでダラダラしている。

席に戻ると6人掛けボックス席から出ている12本の脚の隙間を縫って床で寝ている乗客がけっこういる。椅子に座る人の足の匂いや列車の振動が直に身体に伝わり、かえってキツそうに思えるが、実際どうなのだろう。

翌朝9時に北京到着。13:30から中央美術学院の学生である近藤さんに798芸術区を案内してもらう。この芸術区は国営工場跡地を利用した広大なアートスペースで、かつてはアイウェイウェイなど国内の芸術家がこの界隈でアトリエを構えていたと聞くが、行政の施策で現在ここはギャラリーや美術館、洒落た飲食店が軒を連ね、ジェントリフィケーションが成された。この界隈をアトリエとしていた作家たちは国内で作品を発表できなくなったりもし、対しこの廃工場は「アート」を充てがわれ、市場経済の場に転用された事象は中国の現状を象徴していると思う。

いま、中国では「投資としてのアート」が成り立っていると聞く。美術大学を卒業すればコマーシャリズムに乗ってなんとかやっていけるらしい。投資家たちは若手作家の作品を買い、それをまた自身で価値付けることで将来的に高い利潤を生む公算。しかしもちろん、その選定眼はピンキリで、学芸員資格も必要ない現状においてはキュレーターが濫立し、それでもアート市場はバブルによって活発化しているとのこと。なんだかんだアートの世界に身をおいて10年ほどになるが、最近はアートとはなにか、なにがその良し悪しとなるのか、わからなくなる瞬間がある。